定年退職を迎え、「さて、これからどのように時間を過ごそう?」と考えている方は多いのではないでしょうか。現役時代には仕事に追われ、なかなか取れなかった読書の時間。実は、定年後の豊かな時間を最大限に活用する方法として、図書館の利用が注目を集めています。
無料で利用でき、快適な環境で読書ができる図書館は、定年後の新しいライフスタイルの拠点として理想的な場所です。しかし、ただ何となく図書館に通うだけでは、その魅力を十分に活かしきれません。
この記事では、定年後の図書館利用を成功させるための具体的な方法から、知っておくべきメリット・デメリット、さらには図書館ライフを充実させる工夫まで、実践的なノウハウを詳しく解説いたします。
定年後に図書館が注目される理由
現代の図書館は、単なる本の貸し出し施設ではありません。定年後の新しい生活において、図書館が重要な役割を果たす理由を見てみましょう。
社会的背景と図書館の価値再発見
超高齢社会を迎えた日本では、定年後の時間の過ごし方が社会的な課題となっています。多くの定年退職者が、長年勤めた会社を離れ、新たな居場所や生きがいを求めています。
そんな中、図書館は定年後の「第三の場所」として脚光を浴びています。家庭でも職場でもない、静かで落ち着いた環境は、人生の新たなステージを歩む方々にとって理想的な空間なのです。
定年後の図書館利用者が増加している背景には、以下のような社会的な変化があります。
まず、平均寿命の延伸により、定年後の時間が大幅に増加したことです。60歳で定年退職した場合、その後20年以上の時間があります。この長い期間を有意義に過ごすため、多くの方が知的な活動を求めるようになりました。
次に、終身雇用制度の変化により、会社に依存しない生き方への関心が高まったことです。定年後は自分らしい時間の使い方を見つけたいという意識が強くなっています。
さらに、デジタル化が進む一方で、紙の本への愛着や読書の価値が再認識されていることも大きな要因です。
環境配慮の観点から見た図書館利用の意義
現代社会では持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まっており、環境に配慮した生活が重視されています。図書館の利用は、単に個人の読書欲求を満たすだけでなく、環境保護にも貢献する行為なのです。
本を購入して読んだ後、多くの場合は古本店に売ったり寄付したりしますが、最終的には廃棄されてしまうケースが少なくありません。特に人気のない本や古い本は、引き取ってもらえずに処分される運命にあります。
これに対し、図書館の本は多くの人に読み継がれます。人気の新刊本では、1冊あたり100人以上の予約が入ることも珍しくありません。つまり、1冊の本を10人以上が共有して読むことになり、紙資源の有効活用につながっているのです。
このような「本の使い捨て」を避ける意識は、環境問題が深刻化している現在において、とても重要な考え方といえるでしょう。
定年退職者にとっての図書館の魅力
定年退職者が図書館に魅力を感じる理由は多岐にわたります。
まず、時間的な制約がなくなったことで、じっくりと本を選び、ゆっくりと読書を楽しめるようになったことです。現役時代は通勤途中で読みやすい文庫本中心でしたが、退職後は重い単行本でも自宅で快適に読むことができます。
また、知的好奇心を満たす場として図書館が機能していることも重要なポイントです。新しい分野の本に挑戦したり、長年興味があったテーマを深く掘り下げたりと、学習意欲を刺激する環境が整っています。
さらに、社会とのつながりを維持する場としての役割もあります。図書館では様々な年代の人が同じ空間で過ごしており、適度な社会性を保つことができます。
図書館利用の基本的な方法とコツ
図書館を効果的に利用するためには、基本的な仕組みを理解し、適切な方法で活用することが重要です。
図書カードの作成と登録手続き
図書館を利用するための第一歩は、図書カードの作成です。
多くの自治体では、住所を証明できる身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)を持参し、図書館で所定の登録手続きを行えば、即日で図書カードを発行してもらえます。
登録時に記入する内容は、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報です。メールアドレスの登録は必須ではありませんが、予約した本の受取通知などのサービスを受けるために登録しておくことをお勧めします。
図書カードは無料で作成でき、有効期限は通常3〜5年程度です。更新手続きも簡単で、期限が近づくと図書館から通知が届きます。
効果的な本の探し方
図書館で本を探す方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
1. 書架での直接検索 従来の方法で、図書館内の書架を歩いて目当ての本を探します。分類番号に従って本が整理されているため、関連する本を発見しやすいというメリットがあります。
2. 館内検索端末の利用 図書館内に設置されているコンピューター端末で、タイトルや著者名、キーワードから本を検索できます。検索結果には所在場所も表示されるため、効率的に本を見つけることができます。
3. インターネット検索・予約システム 自宅のパソコンやスマートフォンから図書館のホームページにアクセスし、蔵書検索や予約ができるサービスです。この方法が最も便利で効率的な方法といえるでしょう。
予約システムの活用術
図書館の予約システムは、定年後の読書ライフを充実させる重要なツールです。
多くの図書館では、インターネット上で蔵書検索ができ、読みたい本が見つかったらそのまま予約することができます。予約した本が利用可能になると、メールで通知が届く仕組みになっています。
予約システムの大きなメリットは、複数の図書館の蔵書を横断的に検索できることです。お住まいの自治体内にある全ての図書館の本を、最寄りの図書館で受け取ることができます。
予約のコツとしては、以下の点が挙げられます。
まず、新刊や人気作家の本は早めに予約を入れることです。発売と同時に多くの予約が入るため、後から予約すると長い間待つことになります。
次に、予約の上限冊数を把握しておくことです。多くの図書館では1人あたり10〜30冊まで予約できますが、この枠を有効活用することで、常に読みたい本が手元にある状態を作れます。
また、予約した本の受取期限を守ることも重要です。通常、取り置き期間は1週間程度で、期限を過ぎると予約がキャンセルされてしまいます。
図書館を利用するメリット・デメリット
図書館利用には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらを正しく理解することで、より効果的な活用が可能になります。
図書館利用の主なメリット
1. 費用の大幅な節約 最も明白なメリットは、読書にかかる費用を大幅に削減できることです。
文庫本でも800円から1,000円、単行本なら2,000円から3,000円、上下巻セットなら5,000円程度かかります。月に10冊読む方なら、書籍代だけで1万円を超えることも珍しくありません。
定年後は現役時代に比べて収入が減る傾向にあるため、この費用削減効果は非常に大きいといえるでしょう。年間で考えると、10万円以上の節約になることもあります。
2. 試し読みの自由度 図書館では、お金を気にせずに様々な本を試し読みできます。
本を購入する場合、どうしても「最後まで読めるか」「お金に見合う内容か」を考えてしまい、冒険的な選択をしにくくなります。
しかし図書館なら、普段読まないジャンルの本や新しい作家の作品にも気軽にチャレンジできます。もし途中で読む気が失せても、経済的な損失はありません。
このような試し読みを通じて、新しい分野への興味を発見したり、好みの作家を見つけたりすることができます。
3. 本の処分が不要 現役時代に本を購入して読んでいた頃は、読み終わった本の処分が頭を悩ませる問題でした。
古本店に売りに行くにしても、重い本を持ち運ぶ手間がかかります。また、買取価格は期待するほど高くなく、古い本や人気のない本は引き取ってもらえないこともあります。
寄付をする場合も、NPOなどに連絡を取り、取りに来てもらう手配をする必要があります。それでも、すべての本が引き取られるわけではありません。
図書館の本なら、読み終わったら駅前の返却ポストに入れるだけで手続き完了です。この手軽さは、日常生活の大きなストレス軽減につながります。
4. 環境への貢献 前述したように、図書館の利用は環境保護にも貢献します。
1冊の本を多くの人で共有することで、紙資源の節約になります。また、不要になった本を廃棄する量も減らすことができます。
持続可能な社会の実現が求められる現在、このような環境配慮の視点は重要な意味を持ちます。
図書館利用のデメリット
1. 人気本の長い待ち時間 図書館利用の最大のデメリットは、人気のある本の予約待ち時間が非常に長いことです。
芥川賞や直木賞を受賞した作品、映画化された原作小説、話題の新刊本などは、多数の予約が集中します。図書館では複数冊購入しますが、それでも予約者数に追いつかないことがほとんどです。
例えば、話題の新刊本に予約を入れたとしても、300人待ちということも珍しくありません。1人あたり最長3週間の貸出期間を考慮すると、1年以上待つことになる場合もあります。
2. 貸出期間の制限 図書館の本には必ず返却期限があり、通常は2週間程度です。
次の予約者がいる場合は延長ができないため、決められた期間内に読み終える必要があります。厚い本や読みにくい本の場合、時間が足りないこともあるでしょう。
また、複数の予約本の順番が同時期に回ってくると、短期間で何冊も読まなければならない状況になります。
3. 読みたい時に読めない不確実性 予約システムの性質上、いつ順番が回ってくるかわからないという問題があります。
時間に余裕があって読書したい時には順番待ちで、忙しい時期に限って複数の本の順番が回ってくるということもよくあります。
このような不確実性は、計画的な読書スケジュールを立てにくくする要因となります。
定年後の図書館利用を成功させる工夫
図書館のデメリットを最小限に抑え、メリットを最大化するための実践的な工夫をご紹介します。
予約枠を最大限活用する戦略
多くの図書館では、1人当たり10〜30冊まで予約できる制限があります。この枠を戦略的に活用することで、常に読みたい本が手元にある状態を作れます。
段階的予約のテクニック 一度に多くの本を予約せず、定期的に少しずつ予約を入れることがコツです。新刊や人気作家の本、興味のある分野の本など、バランスよく予約リストを組み立てましょう。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」の考え方で、回転の早い新書や実用書も含めて幅広く予約することで、予約待ちの空白期間を減らすことができます。
優先順位の設定 すべての本が同じ優先度ではありません。「すぐに読みたい本」「時間があるときに読みたい本」「いつか読んでみたい本」の3段階に分けて管理することをお勧めします。
読書スケジュールの調整術
複数の本の順番が重なってしまった場合の対処法をマスターしておきましょう。
時間差借用のテクニック 2冊以上の本の順番が同時期に回ってきた場合、1冊はすぐに借りて、もう1冊は猶予期間ギリギリに借りるようにします。これにより、最低でも1週間の時間差を作ることができます。
読了時間の予測 本の厚さやジャンルから、読了にかかる時間をある程度予測しておきましょう。小説なら比較的早く読めますが、専門書や実用書は時間がかかることが多いです。
集中読書期間の設定 予約本が重なった時期を「読書週間」と捉え、積極的に読書時間を確保する期間として活用しましょう。この集中的な読書により、読書の質も向上します。
図書館にない本の対策
どうしても読みたい本が図書館にない場合や、長期間待てない場合の代替策も用意しておきましょう。
購入との使い分け基準 以下のような本は購入を検討してもよいでしょう。
- 手元に置いて何度も読み返したい本
- 緊急性の高い実用書や参考書
- 図書館に所蔵されていない専門書
リクエスト制度の活用 多くの図書館では、利用者からのリクエストに応じて新規購入を検討する制度があります。新刊本や話題の本は積極的にリクエストしてみましょう。
効率的な読書環境の整備
図書館での読書をより快適にするための環境づくりも重要です。
読書グッズの準備 老眼鏡、ブックマーカー、メモ帳、筆記用具など、読書に必要なものを常に携帯できるようにしておきましょう。
読書記録の習慣化 読んだ本のタイトル、著者、読了日、感想などを記録する習慣をつけると、読書体験がより豊かになります。
図書館の高齢者向けサービス活用法
現代の図書館では、高齢者のニーズに応えた様々な特別サービスが提供されています。
大活字本・音訳サービス
年齢とともに視力が衰えてきた方でも、読書を続けられるようなサービスが充実しています。
大活字本コーナー 通常の活字よりも文字を大きくした本が用意されています。小説、実用書、雑誌など、様々なジャンルの大活字本があり、特別な申し込み手続きなしに通常の貸出と同じように借りることができます。
音訳・朗読サービス 視覚に障害のある方や、目が疲れやすい方向けに、本の内容を音声で聞けるサービスがあります。プロのナレーターによる朗読CDやデジタル音源が利用できる図書館も増えています。
高齢者向け講座・イベント
図書館は単なる本の貸し出し施設ではなく、生涯学習の拠点としても機能しています。
シニア大学・読書塾 60歳以上を対象とした学習プログラムを提供している図書館があります。参加者自らがテーマを決めて調査研究し、その成果をレポートにまとめて発表する形式が一般的です。
音読教室・読み聞かせ会 認知症予防にも効果があるとされる音読を中心とした教室や、懐かしい作品の読み聞かせ会なども開催されています。
回想法プログラム 昔の道具や写真を使って思い出話をする「回想法」を取り入れたプログラムも注目されています。これは認知症予防や心理的な健康維持に効果があるとされています。
配本・宅配サービス
身体的な理由で図書館に通うのが困難な方向けのサービスも拡充されています。
団体配本サービス 老人福祉施設や高齢者向け住宅に対して、図書館職員が定期的に本を届けるサービスです。
個人宅配サービス 一部の図書館では、個人宅への配本サービスも開始されています。利用条件は図書館によって異なりますが、今後拡大が期待されるサービスです。
図書館以外の読書方法との比較
図書館以外にも、現代には様々な読書手段があります。それぞれの特徴を理解して、使い分けることが重要です。
電子書籍サービスとの比較
メリット
- 即座に読み始められる
- 文字サイズを自由に調整可能
- 大量の本を持ち運べる
- 夜間でも読みやすい
デメリット
- 月額料金がかかる
- デジタル機器に慣れる必要
- 紙の本とは読書感覚が異なる
オーディオブックサービス
定年後の読書選択肢として、近年注目を集めているのがオーディオブックサービスです。
サービスの特徴と魅力 月額880円程度で様々な本が聴き放題になるサブスクリプションサービスが登場しており、従来の読書とは全く異なる体験を提供しています。
最大の魅力は、プロのナレーターによる朗読で本を楽しめることです。声優や俳優が朗読を担当することも多く、まるでドラマを聞いているような臨場感のある読書体験ができます。これまでの活字を目で追う読書とは違った、新しい読書の楽しみ方を味わうことができるでしょう。
定年後世代に特に適している理由 年齢とともに視力が衰えがちな定年後世代にとって、目が疲れることなく読書を続けられるのは大きなメリットです。長時間の読書で目が疲れてしまう方でも、オーディオブックなら何時間でも楽しむことができます。
また、散歩や軽い運動をしながら、家事をしながら、さらには就寝前のリラックスタイムにも活用できる点が魅力的です。
図書館利用との使い分け 図書館の予約待ちが長い時期の代替手段として、またはデジタル技術に慣れ親しむ第一歩として、オーディオブックサービスを活用する方法もあります。
月額880円という料金は、図書館が無料であることを考えると高く感じるかもしれませんが、1冊の単行本価格程度で多数の本を楽しめることを考えると、決して高くはありません。
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適用場面
- 長時間の読書で目が疲れる方
- マルチタスクを好む方
- 朗読による新しい読書体験を求める方
- 図書館の予約待ちの合間を埋めたい方
- デジタルサービスに挑戦してみたい方
古本・新刊書店の活用
メリット
- 好きな時に購入・読書開始
- 手元に残すことができる
- 書き込みや付箋貼りが自由
デメリット
- 購入費用がかかる
- 保管場所が必要
- 処分時の手間
定年後の図書館ライフを充実させる心得
図書館を単なる本の貸し出し施設としてではなく、人生の豊かさを深める場として活用するための心構えをお伝えします。
読書に対する考え方の転換
定年後の読書は、現役時代とは異なるアプローチが可能になります。
時間的制約の解放 通勤時間に読む必要がなくなったことで、重い単行本も気軽に読めるようになりました。また、じっくりと内容を咀嚼しながら読む時間的余裕も生まれています。
学習意欲の再燃 現役時代に興味があったものの、時間がなくて諦めていた分野に挑戦する絶好の機会です。歴史、哲学、芸術など、深い知識を要する分野も時間をかけて学ぶことができます。
読書の質の向上 返却期限があることで、集中して読書に取り組む習慣が身につきます。積読を避け、読み始めた本は最後まで読み通すという習慣は、読書の質を大幅に向上させます。
社会との関わりを意識した読書
図書館での読書は、単なる個人的な楽しみを超えた社会的な意味も持っています。
環境配慮の実践 1冊の本を多くの人で共有することで、資源の有効活用に貢献していることを意識しましょう。この小さな行動が、持続可能な社会の実現につながっています。
世代間交流の場 図書館は様々な年代の人が利用する場所です。若い世代から学ぶことも多く、社会とのつながりを維持する重要な場となります。
知識の循環 図書館で得た知識や情報を、家族や友人と共有することで、知識の循環に貢献できます。
継続的な学びの姿勢
定年後の読書ライフを成功させるためには、継続的な学びの姿勢が重要です。
好奇心の維持 新しいジャンルの本にも積極的にチャレンジし、好奇心を維持し続けましょう。試し読みができる図書館の特性を活かして、冒険的な読書を楽しんでください。
読書記録の活用 読んだ本の記録をつけることで、自分の興味の変遷や知識の蓄積を客観視できます。これは今後の読書選択の参考にもなります。
読書コミュニティへの参加 図書館が主催する読書会や講座に参加することで、同じ興味を持つ仲間との出会いの機会を作ることができます。
まとめ:定年後は図書館が最高!
定年後の図書館活用は、単なる時間つぶしではなく、人生を豊かにする重要な活動です。無料で利用でき、環境にも配慮した読書スタイルは、現代社会にふさわしい賢い選択といえるでしょう。
予約システムを効果的に活用し、待ち時間を逆手に取った読書計画を立てることで、図書館のデメリットを最小限に抑えることができます。また、高齢者向けサービスを積極的に利用することで、年齢を重ねても読書を継続できる環境を整えることが可能です。
住民の税金で運営されている図書館を積極的に利用することは、社会への貢献でもあります。利用者が増えることで、図書館のサービスもさらに充実していくでしょう。
定年後の新しいライフスタイルの一部として、図書館での読書ライフを取り入れてみてはいかがでしょうか。きっと、充実したセカンドライフの大きな支えとなることでしょう。

