年金については知っているようで知らないことが多い
年金については知っていると思っていても、受給する年齢にならないと調べないものです。私もそうでした。細かなポイントが変更されることもあるので、需給の数年前になってからしっかり勉強すれば良いと思います。
ここでは、厚生年金の計算方法や受給額について調べてみたポイントをまとめてみました。ちょっと小難しいところもありますが、ざっと読んでみてくださいネ(^^♪
私は、年金について分りやすくまとめている本を参考にしています。手元に一冊持っていると安心ですよ(^^♪
厚生年金の受給額の計算方法
老齢厚生年金の受給額の計算方法はとても複雑です。というのも国民年金と違って厚生年金は各人によって支払う保険料が違うからです。
保険料は被保険者の給与と賞与をベースに計算されるので、給与や賞与の額が違えば保険料も違い、その結果受け取る受給額も変わります。
まずは計算式から見てみましょう。
厚生年金受給の計算式
計算式には2つあって、この2つの計算式のうち、金額の大きい方が支給額となります。
- 本来水準方式
平均標準報酬月額×0.007125×平成15年3月までの払込月数+平均標準報酬額×0.005481×平成15年4月以降の払込月数 - 従前額保証方式
平均標準報酬月額×0.0075×平成15年3月までの払込月数+平均標準報酬額×0.005769×平成15年4月以降の払込月数 (乗数は昭和21年4月2日以降生まれに適用)
上記の2つの計算式を見てわかるのは、どちらも「平均標準報酬」、「乗数」、「払込期間」が計算に必要なことです。また平成15年3月までと4月以降で何かが変わったことが分かります。それぞれを見てみましょう。
平均標準報酬は給与をベースに算出されるものですが、平成15年3月までは給与のみの平均でした。4月以降は給与に賞与が加わったもの、いわば年収の平均に変わったのです。
厚生年金では毎月の給与を「標準報酬月額」、賞与を「標準賞与」というものに変換して、これに基づいて保険料を算出しています。
また過去の標準報酬月額や標準賞与を現在の価値に置き換える再評価も行っており、乗数についても、「本来水準」と「従前額保証×物価スライド」で毎年計算して金額の高い方を取るため、個人では正確な数値を把握することができないのです。
厚生年金受給額の目安
このように受給額の算出はとても難しく、一般の人ではなかなか算出できません。
しかし、大体いくらくらいもらえるのかなら知ることができます。
厚生年金受給額の早見表
てっとり早く大体いくらくらいを貰えるのかを知るためには早見表があります。
厚生年金受給額の平均値
令和元年度の老齢厚生年金の平均年金受給額は144,268円です。
受給者数が一番多いのが月額9万円~10万円で、月額1万円未満の人から30万円以上の人もいます。
男性と女性では、男性が月額165,668円、女性は103,026円で、男性の方が多く受給しています。
これは女性の方が結婚退職などで勤続年数が短いことや、管理職などの給与の高いポジションについた人が少ないためです。
加給年金
ここまで、どのように年金の支給額が算出され、受給額の目安はどのくらいかなどを見てきました。ここで条件によって年金が増える場合について説明します。
その一つが加給年金です。加給年金は65歳の年金支給時に被扶養者がいる場合に支給される年金です。
加給年金の受給要件
加給年金は被保険者が20年間以上、厚生年金に加入しており、配偶者の生計を維持していること、配偶者の厚生年金加入期間が20年未満であり、65歳以下であること、また子供が18歳になる年度の末日までの年齢までであれば受給できます。
加給年金の支給額
配偶者及び1人目、2人目の子供はそれぞれ22万4,300円です。3人目以降の子供は1人当たり7万4,800円となります。
繰り下げ受給に注意
加給年金の受給を考えている人は、老齢年金の繰り下げ受給に注意が必要です。
繰り下げを行ったことで、配偶者や子供の年齢が支給条件の年齢を超えてしまうと受給できなくなってしまいます。反対に繰り上げ受給したとしても、加給年金の受給時期は早まることはありません。
特別支給の老齢厚生年金
1985年に国民年金法が改正された結果、60歳から支給されていた年金が5年繰り下がって、65歳から支給されることになりました。しかし、いきなり65歳からの支給にするには軋轢も大きかったため、支給開始年齢を段階的に引き上げるために設定されたのが「特別支給の老齢厚生年金」です。
支給条件
特別支給の老齢厚生年金は、老齢基礎年金(いわゆる国民年金)の受給資格期間が10年以上あり、かつ厚生年金に1年以上加入していたことがある人が利用できる制度です。
制度改正の暫定処置という特別なものであるため、1961年4月1日以前に生まれた男性と1966年4月1日以前に生まれた女性が対象となっています。
分りやすく言えば、昭和36年4月1日以前に生まれた男性、昭和41年4月1日以前に生まれた女性は、特別支給の老齢厚生年金の受給対象なので、65歳になる前に受給できるということです。
特別支給の老齢厚生年金の早見表
特別支給の老齢厚生年金は、加入期間中の報酬と加入期間に基づいて計算される報酬比例部分と「生年月日による単価×加入月数×物価スライド率」で算出される定額部分の2つで構成されています。
この2つがそれぞれ段階的に後ろ倒しになっています。それを表したのが下の表です。
とても残念なのですが、1949年4月2日以降に生まれた男性や1954年4月2日以降に生まれた女性は定額部分は支払われません。
時効に注意
この特別支給を受けるためには事前の申請が必要です。
支給が開始される年齢の誕生月の2か月前に年金機構から緑の封筒に入った「年金請求書」という書類が送られてきます。
その書類を記入し、近くの年金事務所に行って年金の請求手続きを行います。この請求には5年の時効があって、何も手続きをしないまま5年が経過してしまうと請求権を失ってしまいます。またこの制度では繰り下げ受給を行うことはできません。
特別支給の老齢厚生年金請求の手続きは早目に終えてしまうことがとても大切なので、年金請求書がいつ来るのかメモしておきましょう。
在職老齢厚生年金
さて、先に述べた年金請求の手続きのために年金事務所を訪ねると、必ず説明を受けるのが在職老齢年金の制度です。
この在職老齢厚生年金制度は、60歳以降も会社に勤めて働き、厚生年金の保険料を支払いながら、年金の受給もするという人が対象になっています。
どんな制度なのか、課題は
60歳から64歳までの人は月給と年金の合計が28万円、65歳以上の人は47万円を超えると、年金が支給停止になってしまいます。
これにより年金支給停止の措置を受けている人は124万人にも上り、毎年約1.1兆円の年金が支給停止となっています。このため、企業は定年退職した人の雇用延長をする際に、年金と併せて28万円になるくらいの給料しか払わないといった事態も生まれています。
制度改正に向けて
政府はこの制度が60歳以降も継続して働く意欲を削ぐものとして廃止を検討しています。早ければ2021年にも廃止されるとの見方が有力です。この制度が廃止され、働いて給料をもらった上に、さらに年金が受給できれば、働くことに対する意欲も持ち続けられますし、70歳で定年を迎えた以降の年金生活に備えて貯蓄をすることも可能になります。
まとめ
厚生年金は会社で働く人が加入する年金で、受給額の算出の仕組みはとても複雑で正確な金額を知ることは容易ではありません。しかながら過去の実績や早見表などで大よその金額を知ることはできます。自分が受け取れそうな年金額を調べて定年後の人生設計に役立てましょう。
配偶者や子供のある人は加給年金が受けられることもあります。年齢制限などの条件がありますので、制度の内容をよく理解して利用しましょう。
厚生年金は段階的に支給年齢が引き上げられ、4年後の2023年には65歳からの支給になります。それまでの間は暫定的に「特別支給の厚生年金」が支払われます。 特別支給の厚生年金 の制度を利用するには事前の申請が必要です。時効もありますので忘れないように注意しましょう。
在職老齢年金は60歳以上の働く人を対象にした制度で一定水準以上の給料をもらうと年金がカットされてしまう仕組みです。この仕組みは高齢者の働く意欲を削ぐものとして廃止が検討されています。現行制度では年金がカットされてしまうケースもありますが、保険料を長く払い続ければ、定年後の受給額は増えますので、長く働くことは年金の受給額を増やすためには重要です。